この記事では税理士試験の会計科目2科目のうち、財務諸表論の独学合格法について書いていこうと思います。
会計科目のもう1科目である簿記論に関しては、以下の記事を参照してください。
・財務諸表論は税理士試験の中で最も合格しやすい
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税理士試験の中で最も合格しやすいのがこの財務諸表論という科目です。
ここで財務諸表論の受験者数、合格者数、合格率の推移を見てみましょう。
西暦(元号/回数) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2010年(平成22年/第60回) | 19,230 | 2,520 | 13.1 |
2011年(平成23年/第61回) | 18,650 | 3,101 | 16.6 |
2012年(平成24年/第62回) | 18,246 | 3,785 | 20.7 |
2013年(平成25年/第63回) | 16,137 | 3,611 | 22.4 |
2014年(平成26年/第64回) | 13,372 | 2,460 | 18.4 |
2015年(平成27年/第65回) | 12,202 | 1,906 | 15.6 |
2016年(平成28年/第66回) | 11,420 | 1,749 | 15.3 |
2017年(平成29年/第67回) | 10,424 | 3,081 | 29.6 |
2018年(平成30年/第68回) | 8,817 | 1,179 | 13.4 |
直近の合格率は13.4%ですが、第67回試験に関してはほぼ30%の合格率となっています。
ちなみにその他の科目の平成30年試験(第68回)の受験者数、合格者数、合格率と平成29年試験(第67回)の合格率が国税庁のホームページで公開されているのですが、その表を見ても財務諸表論の合格率が高いことがわかります。(以下、国税庁のホームページを参照し、管理人作成)
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 平成30年度合格率 | 平成29年度合格率 |
簿記論 | 11,941 | 1,770 | 14.8 | 14.2 |
所得税法 | 1,704 | 209 | 12.3 | 13.0 |
法人税法 | 4,681 | 542 | 11.6 | 12.1 |
相続税法 | 3,089 | 363 | 11.8 | 12.1 |
消費税法 | 7,859 | 833 | 10.6 | 13.3 |
酒税法 | 546 | 70 | 12.8 | 12.2 |
国税徴収法 | 1,703 | 182 | 10.7 | 11.6 |
住民税 | 460 | 62 | 13.5 | 14.3 |
事業税 | 418 | 46 | 11.0 | 11.9 |
固定資産税 | 845 | 126 | 14.9 | 13.3 |
合計 | 42,063 | 5,382 | 12.8 | 17.0 |
平成30年は簿記論、固定資産税の合格率が少し高かったのもあり、財務諸表論は4番目の合格率の高さでした。
平成29年に関しては財務諸表論がダントツの合格率でした。その他の年も(たしか私が受験した年も)財務諸表論は全科目の中で合格しやすい科目の一つです。
・簿記論とセットで受験すると良い
勉強する時間をある程度取ることのできる学生や試験専念組、簿記・会計学に自信のある人は簿記論と財務諸表論を同時に受験すると良いですね。
簿記論のレベルの簿記ができるようになれば、財務諸表論の計算問題はかなり楽に解くことができますし、財務諸表論の理論の勉強をすると簿記の計算がどのような会計規則からされているのかも理解することができます。いわゆる相乗効果ってやつです。
なので可能な限り簿記論と財務諸表論は同時に受験し、一気に2科目合格してしまいましょう。
当たり前ですが一度に2科目合格すれば他の科目の勉強も早く始めることができますし、税理士試験合格にも一気にはずみがつくと思います。
(私はまだ税理士試験に合格していないので断定できませんが(笑))
仕事をしているなどの理由で1科目しか受験できない場合は、まず財務諸表論を受験すると良いと思います。
・税理士試験財務諸表論の基礎レベルの勉強
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財務諸表論の基礎レベルの勉強ですが、ここも簿記論の基礎レベルの勉強と同じように日商簿記3、2、1級の勉強でカバーします。
日商簿記1級では会計規則などの理論の出題もありますので、そこの勉強を丁寧にしておくと財務諸表論の勉強にも生きてきます。
簿記論の記事でも紹介したのですが、おすすめのテキストはTAC出版から出版されている、『よくわかる簿記シリーズ 合格テキスト』です。
このテキストには企業会計原則などの会計規則の原文が各章に引用されており、これを読むだけで財務諸表論の勉強になります。
というのも、財務諸表論の試験でも会計規則の原文の穴埋め問題が出題されますし、論述の問題も原文を暗記しておけば解ける問題が結構な割合で出題されるからです。
・税理士試験財務諸表論本番レベルの勉強(直前まで)
日商簿記1級の勉強が終わったら財務諸表論の本番レベルの勉強に入っていきます。
まず、TAC出版から出ている、『財務諸表論 理論問題集 基礎編』、『財務諸表論 個別計算問題集』を使用します。
この2冊は財務諸表論の本番レベルよりやや簡単ですが、基礎を固めるにはピッタリの問題集です。私はこの問題集をまず何も見ずに解いていき、できなかった問題だけを2~3回繰り返しました。
この2冊は日商簿記1級の勉強をしていれば、それほどつまずくことなく進めると思います。
上記2冊と並行して、『財務諸表論 重要会計基準』を暗記します。最終的にはこの本をすべて暗記することになるので、できるだけ早めに手を付けておきます。
次に、同じくTAC出版の、『財務諸表論 総合計算問題集 基礎編』、『財務諸表論 総合計算問題集 応用編』、『財務諸表論 理論問題集 応用編』を使っていきます。
『総合計算問題集 基礎編』は簡単な総合問題が10題収録されています。財務諸表論の計算問題は総合問題形式ですので、この問題集で形式に慣れていきます。
問題自体が難しすぎると総合問題に慣れるというより、その問題に含まれている論点を一つ一つ解き明かしていかなくてはならないので、総合問題の演習にならなくなってしまう場合があります。
その点、この問題集は一つ一つの論点は難しくないので、総合問題形式に慣れるにはピッタリの問題集です。
各問題に制限時間が設けられていますので、1回目からできるだけ制限時間内に解くようにします。何回か繰り返し最終的にはすべての問題を制限時間内に完全に解けるようになりましょう。
『総合問題集 応用編』は本番レベルの問題が10題収録されています。こちらの問題集も制限時間が各問題に設けられていますので、時間を計って本番だと思って解きます。
こちらの問題集は難易度の高い問題も含まれていますので、初見では満足に解答できないかもしれませんが、その問題は解説をよく読んで理解し、何回もチャレンジして制限時間内にだいたい解けるようにしておきましょう。
『理論問題集 応用編』も良書であり、本番レベルの論述問題対策になります。解説には本番の試験で点数が配点されるであろう重要箇所を明らかにしてくれているので、本番でどの単語、文を書き漏らしてはいけないのかがわかるようになります。
こちらもなかなか初見ではすぐに解けませんが、何回も繰り返し、仮にこの問題が本番で出たら丸暗記したものをそのまま書けば良いというくらい暗記しましょう。
財務諸表論の理論の勉強では、問題集の問題やテキストの会計規則の原文をいかに多く試験本番に持っていくかということも大事になります。
ここでまだ試験本番まで時間のある人は大原から出版されている問題集もこなしておくと良いですね。
特に理論問題に関しては本番でどのように採点されているのかわからないわけですから、いろいろな予備校の問題集の解答解説を読むのは非常に勉強になります。最低限、TACと大原の問題集はこなしておきたいところです。
・税理士試験財務諸表論本番レベルの勉強(直前対策)
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ここからは直前対策の勉強法です。正直、直前対策に関してはそれほど書くことがありません(笑)
私は簿記論と同じく、TACの直前対策の資料通信を申し込みました。
というのも5月か6月あたりから予備校の直前対策を申し込んで、それを勉強するというのが勉強のほぼすべてを占めることになるからです。
計算問題に関しては本当に予備校の直前対策だけでよく、問題数もかなりありますので、それを完璧にするだけで精一杯だと思います。
理論に関しては直前対策だけでなく、今まで解いてきた問題集の解答例も本番で書けるようにしっかり直前まで暗記しておきます。
私の場合、6月から直前対策に取り掛かり、市販の過去問も含めて、8月の頭にほぼ終わらせました。
ちなみに市販の過去問は簿記論と同じく税務経理協会から出版されている、『税理士試験過去問答案練習 財務諸表論』です。
その後、簿記論はともかく財務諸表論だけはどうしても合格したいという思いがあったので、念には念を入れて理論対策を念入りにしました。
具体的には今までにこなしてきた、『理論問題集 基礎編』、『理論問題集 応用編』、『重要会計基準』を書いて総復習しました。
さらに会計学の名著である、『財務会計講義』を読み、会計法規集で細かい箇所を詰めました。
そしてこの会計法規集を読むのが本番で絶大な効果を発揮しました。(ちなみに大学院の入試でも会計法規集からの出題がありました)
会計法規集は会計規則を集めた本なので当たり前なのですが、本番の理論問題はほぼ会計法規集の暗記でクリアすることができました。
予備校の解答速報で捨てる問題とされていた問題も、予備校の解答どおりの解答を書くことができました。
結局、自己採点は90点超え(TAC、大原両方とも)だったので、確実に合格したなと感じたのを覚えています。
確かに会計法規集の暗記は無味乾燥であまりモチベーションも上がらないのですが、絶大な効果を発揮するので余裕がある人は読んでおくと良いですね。
・まとめ
以上、私の財務諸表論の合格体験記でした。
全体をまとめると、
・日商簿記3級、2級の勉強をしていない人はそこから始める。(これは簿記論でも同じですね)
・上がクリアできている場合は、日商簿記1級のテキスト、問題集で基礎を固める。(計算だけでなく、引用されている会計規則の原文をよく読む)
・税理士試験対策の問題集を解く&重要会計基準集を暗記する。
・税理士試験直前対策講座で本番レベルの問題を解きまくる。
・余裕があれば、覚えるだけで点が取れる理論問題を得点源にするために、『財務会計講義』と『会計法規集』を読み込む。
という流れです。
合格までにかかった費用は、日商簿記1級のテキスト、問題集が13,176円。(これは、簿記論と重複します)税理士試験の市販問題集が14,580円。
直前対策が市販の過去問を含めて45,000円と3,000円(?)です。
さらに、『財務会計講義』が4,104円、『会計法規集』が2,268円です。
全部で約82,128円です。
簿記論とセットで受験する場合は、日商簿記1級のテキスト、問題集は重複するので、約69,000円ほどです。
TACの1年間で合格を目指す講座ですと、財務諸表論も簿記論と同じように263,000円~133,000円ほどの講座料ですし、大原も5月開講の講座ですと225,000円~221,000円ほどの講座料となっているので、やはり独学は安く済みますね。
税理士試験をこれから受験する人は参考にしてみてください!
また何かあったら追記しようと思います。
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